CES2026 報告書 VOL.2 (Venetian Campus)

CES 2026視察2日目のレポートを作成しました。初日の「Physical AI(AIの身体化)」という大きな流れを受けつつ、2日目はより具体的な製品やサービス、そして未来を担うスタートアップの熱気を感じる内容となっています。


【CES 2026:2日目視察レポート】

暮らしを劇的に変える「実装の多様性」と、スタートアップの爆発的エネルギー

2日目は、広大な展示会場の中でも、優れた製品が一堂に会する「イノベーションアワード・ショーケース」と、世界中の野心的なアイデアが集まる「スタートアップ・ホール(エウレカ・パーク)」を中心に視察しました。


■ CESイノベーションアワード(Innovation Awards)

「テクノロジー界のオスカー賞」が示す、2026年の最先端

CESイノベーションアワードは、出展製品の中からデザインやエンジニアリングにおいて卓越した製品に贈られる賞です。主催する全米民生技術協会(CTA)が、28のカテゴリーごとに「Honoree(入賞)」および、最高評価の「Best of Innovation」を選出します。 このショーケースを巡るだけで、今年から来年にかけてのトレンドを一望できます。2026年は特に「アクセシビリティ(障害者支援)」や「サステナブルなインフラ」における受賞が目立ちました。

■ 主要ブース・製品分析

Wan AIchef

AI搭載のスマートオーブン「AI Chef Ultra」を披露。従来の「オートモード」とは一線を画し、内蔵センサーが食材の種類や状態をリアルタイムで識別し、最適な調理時間と温度をAIが自律的に判断します。ユーザーはボタンを押す必要さえなく、食材を放り込むだけでプロ級の火加減を実現。キッチンの自動化における「究極の簡略化」を提示していました。

Citizen

最新のスマートウォッチを出展。特筆すべきは、スマートフォンと連携しながらも、約1週間の連続稼働を可能にした省電力技術です。高級感のあるデザインを維持しつつ、ヘルスケア機能と日常使いの実用性を500ドル前後という価格帯で両立させています。日本の時計メーカーが持つ「堅牢性とデザイン性」をウェアラブル領域で再定義した意欲作です。

NTT integration powered by Nutrix

スイスのスタートアップNutrix社と連携したヘルスケアアプリ「Pacer AI」を展示。唾液でストレスホルモン「コルチゾール」を測定するデバイス「cortiSense」のデータを活用し、AIがユーザーにパーソナライズされたウェルネス・アドバイスを提供します。ゲーミフィケーションを取り入れたUIで、目に見えない「心の健康」を科学的に可視化する試みです。

Daiya industry(ダイヤ工業)

バッテリー不要のアシストスーツ「DARWING UPS」が注目を集めました。歩行時の足の動きでポンプを動かし、圧縮空気を人工筋肉に蓄える独自のシステムを採用。電力を使わないため、軽量かつメンテナンスフリーで、長時間・広範囲の物流現場や介護現場での活用が期待されます。「服のように着るだけで負担を軽減する」という、実用性に振り切った進化を見せていました。

TBSテレビ(OTOROKU / Multi STUDIO)

放送技術をベースにしたBtoBソリューションを展開。テキストから自然なナレーションを生成する「音六AI(OTOROKU)」は多言語対応も進み、制作現場の省力化に貢献します。また、超低遅延で高品質な映像伝送を実現する「Live Multi Studio」は、東京とラスベガスを結ぶリモート配信デモを行い、その圧倒的な安定性とスピードを証明していました。

KAWADA(カワダ)

川田テクノロジーズのロボット部門として、ヒューマノイドや協働ロボットの最新モデルを展示。特に人間との共生を意識した「滑らかな動き」と「安全性」が強調されており、工場の製造ラインだけでなく、より複雑な環境での活用を想定したデモンストレーションが印象的でした。日本のモノづくりを支える「精密な動作制御」の進化が感じられました。

Kao Corporation(花王)

「歩く」ことを健康の起点とするアプリを出展。お腹にスマホを当てて8歩歩くだけで、AIが骨格のゆがみや歩行のクセを瞬時に解析。その結果に基づき、姿勢を矯正するための専用インソールを提案・販売するビジネスモデルを提示していました。家庭で手軽に行える「高精度な身体診断」として、予防医学への貢献度が高い技術です。

MOVA

「Move Up, Move Beyond」を掲げ、AIが家全体を最適化する「包括的なスマートリビング」を提案。注目はイノベーションアワード受賞の「MOBIUS 60」で、床素材を判別してモップを自律交換する機能を搭載しています。さらに、飛行モジュール「Pilot 70」を装着してフロア間を移動する「空飛ぶ掃除機」や、階段を登る「ZEUS 60」など、物理的な段差を克服する技術を多数披露。屋外用芝刈り機や3Dプリンターまで、AIが生活のあらゆるシーンに介在し、利便性を極限まで高める未来図を示していました。

roborock & DREAME

ロボット掃除機界の二強も、2026年は「物理的な段差への対応」に注力。roborockは脚のような構造で階段を上るデモを行い、DREAMEは超薄型化と強力な吸引力に加え、水拭きモップの自動洗浄・乾燥機能を極限まで高めたモデルを展示。AIによる汚れ検知精度も飛躍的に向上しており、もはや「人間が掃除を意識する瞬間」をゼロにする段階に達しています。

CleAnBotics

商業施設やオフィス向けの自律型清掃ソリューションを展示。最新モデルの「TrashBot」は、AIと高精度センサーを用いてゴミの種類(リサイクル、堆肥化、廃棄など)を投入時にリアルタイムで自動識別し、適切なコンテナへ仕分ける機能を備えています。単なる床掃除にとどまらず、廃棄物管理の自動化を通じて施設のサステナビリティ向上に貢献。人手不足が深刻な清掃業界において、データに基づいた効率的なオペレーションを実現する「清掃のDX」を提示していました。

SwitchBot(スイッチボット)

「Smart Home 2.0」を掲げ、家事そのものからの解放を目指すヒューマノイドロボット「onero(ワンロ) H1」を初公開。22の自由度を持つ関節と、視覚・触覚などを統合処理するAIにより、衣類の片付けや食器洗いといった複雑な非定型作業を自律的にこなします。既存の掃除ロボットなどと連携し、床を掃除する間にテーブルの上を片付けるといった「マルチタスクな家事連携」を実現。単なる便利デバイスから、暮らしのパートナーへと進化を遂げていました。

Asahi Kasei(旭化成)

「プライバシーと利便性の両立」を掲げ、エイジテック・ペットテック向けの新技術を披露。注目はミリ波レーダーを用いた「カメラ不要の転倒検知」で、浴室内などの死角でも10秒以内に異常を検知し、プライバシーを守りながら高齢者の安全を支援します。また、尿で発電し排泄の量や回数を通知する「バッテリーフリーのスマートおむつ」も進化。さらに、術後のペットのバイタルを非接触で監視するシステムなど、独自のセンシングと環境発電技術を掛け合わせ、介護や見守りの負荷を劇的に軽減する社会実装の姿を示していました。

tp-link

次世代の「Wi-Fi 8」対応機器と、AIホームアシスタント「Aireal」を発表。スマートホームの司令塔としてAIがネットワーク全体を最適化し、ユーザーの行動パターンを学習してセキュリティや接続デバイスを自律制御します。「ただつながる」だけでなく、家全体が思考し、守ってくれるようなインテリジェント・インフラとしてのWi-Fiを提案していました。

myFirst(マイファースト)

シンガポール発のキッズテックブランド。2026年は「myFirst Camera 50」などの最新カメラに加え、子供向けの安全なSNS「myFirst Circle」とのシームレスな連携を強調。単なるおもちゃではなく、子供の創造性を育みつつ、親が安心してデジタルライフを見守れる「キッズ・エコシステム」の完成度の高さが、教育関係者からも高く評価されていました。

Daiwa Felicity(ダイワ)

「真実の口(Bocca della Verità)」を模したユニークなハンドマッサージャーが来場者の目を引いていました。彫像の口の中に手を入れると、内部のエアバッグと指圧ローラーが手の疲れを癒やすという、ジョークと実用性を兼ね備えた製品です。リラクゼーションに「遊び心」と「イタリアの芸術性」を取り入れる、同社らしい独創的なアプローチでした。

Outin(アウティン)

ポータブルエスプレッソメーカー「Outin Nano」の最新版を展示。20バールの高圧抽出と、冷水から3分で加熱できる機能を持ち、キャンプやオフィス、車内など場所を選ばず本格的なクレマを楽しめます。2026年モデルは、環境に配慮した素材の採用と、より軽量化されたデザインが特徴で、アウトドアとライフスタイルの融合を象徴する製品となっていました。

ShinEtsuMicroSi / SCIVAX(信越マイクロシ / サイバックス)

信越化学グループとSCIVAXが共同で、最先端のナノインプリント技術を用いた「ウェハレベルレンズ(WLL)」を披露。トヨタ自動車のロボット開発チームと連携し、次世代ヒューマノイドやAMR(自律走行ロボット)に不可欠な、超小型かつ高精度な3Dセンシング用レンズを開発しています。ロボットの「目」の進化を支える、日本の精密加工技術の結晶と言えます。

xTool(エックストゥール)

Innovation Awardを受賞した「xTool P3」を中心に展示。世界初の「AIクラフティングエージェント AImake」を搭載した80W CO2レーザー加工機で、手書きのスケッチからAIが切断・彫刻データを自動生成します。従来は難しかった板金加工(薄物金属への刻印や切断)も容易に行え、個人のクリエイターが「自宅で工場を持つ」ことを可能にする、製造の民主化を象徴する一台です。

Base on Board(ベース・オン・ボード)

アナログのボードゲームとデジタルを融合させた、次世代の野球ゲーム。MLBのリアルデータと連動する「E-inkスマートダイス」を採用し、ピッチャーの能力や試合状況に応じてサイコロの目の確率がリアルタイムで変化します。単なる娯楽を超え、オンラインでの世界大会も開催される「eスポーツ」としての側面を持っており、ハイブリッド・ゲーミングの新しい形を示していました。

Cosito(コシート)

音声入力に特化した在庫管理システムを展示。騒音の多い現場でも正確に音声を認識し、ハンズフリーで棚卸しや検知が可能です。最大の特徴は多言語対応で、現場スタッフの国籍に合わせて言語を即座に切り替えられる点にあります。属人化しがちな在庫管理業務をデジタル化し、物流や製造現場のオペレーション効率を劇的に向上させる、実戦的なAIソリューションとして注目を集めていました。

xydrobe(ザイドローブ)

五感すべてを刺激する超没入型VRポッドを披露。360度の高精細映像に加え、映像に合わせて「温度」や「風」、「香り」までもがリアルタイムに変化し、あたかもその場所にいるかのような体験を提供します。高級ファッションブランドの仮想店舗や観光体験など、単なる視覚情報の提供を超え、物理的な感覚を伴う「体験型コマース」の新たな可能性を提示していました。

FITASY(フィタジー)

スマートフォン一台でオーダーメイドシューズを完結させるオンラインプラットフォーム。AIを活用した高精度な3Dスキャンにより、自宅にいながら足のサイズをミリ単位で測定し、個々の足型に完璧にフィットする靴を製作します。「店舗に行く手間」と「サイズ不一致のリスク」を解消し、パーソナライズされた購買体験をデジタルで民主化する試みです。

ARIVIA

水上を舞台にした革新的なドローンショー・テクノロジーを提案。水中ドローンや水上自律艇(USV)を連携させ、水面での光の演出や噴水、音響をプログラミングされたアルゴリズムで制御します。従来の空中のドローンショーとは異なる、水辺の空間を最大限に活用したダイナミックなエンターテインメント・インフラとして、都市開発や観光振興への応用が期待されます。

maxell(マクセル)

車載カメラ用レンズユニットや、独自の光学技術を応用した最新デバイスを展示。特に、過酷な環境下でも高い視認性を維持するレンズ加工技術や、次世代モビリティの安全を支える高精度な画像認識用コンポーネントが光っていました。電池開発で培った信頼性を基盤に、センシングとイメージングの領域で自動運転社会の進化を下支えする同社の技術力が際立っていました。

IRHEMASAFE

驚異的な防水性能を持つ「水中で使える電源タップ」が話題を呼びました。独自の止水構造と漏電防止技術により、水に濡れた状態や水中であっても通電を維持し、感電のリスクを排除します。屋外イベントや災害時、湿気の多い作業現場など、従来の電源が使えなかった過酷な環境における電力インフラの安全性に革命をもたらす製品です。

Timeli(タイムリ)

カメラ付きのセルフセキュリティ・ソリューション。年間240ドルのサブスクリプションモデルで、高精細な監視映像とAIによる動体検知・顔認識機能を提供します。専門の警備会社を介さず、ユーザー自身がスマホでリアルタイムに管理できる手軽さが特徴。コストを抑えつつ、高度なセキュリティ環境を導入したい個人宅や小規模店舗の需要に応える設計です。

QUANDO,INC.(クアンド)

受託開発で培った高い技術力を背景に、独自の「現場特化型AIエージェント」を披露。現場の熟練工の知見をAIが学習し、若手作業者へリアルタイムで指示やアドバイスを送ることで、技術承継とミス防止を同時に実現します。単なる自動化ではなく、人間の判断をAIが補完し、現場の生産性を最大化させる「人とAIの協働」の具体策を示していました。

大阪商工会議所 / GTIE-Institute of Science Tokyo

日本の技術シーズを世界へ発信するパビリオン。大学発スタートアップや地域企業が、素材からITまで幅広いソリューションを提案。

SHOSABI/ StA2BLE / AMATELUS,Inc / SnapSpace

日本発の独自技術。自由視点映像(AMATELUS)や、素材工学を活かした新機軸のプロダクトなど、日本の「01」技術がエウレカ・パークで存在感を示していました。

Poketomo Tech / UNDUGU ABACUS

ライフスタイルを豊かにするガジェットや、独自のアルゴリズムによる知育・計算デバイスなど、スタートアップらしい独創的なアイデアを披露。

CANON AMERICAS(キヤノン・アメリカーズ)

映像の力でコミュニケーションを再定義する展示を展開。3D映像や自由視点映像を生成する「MR(Mixed Reality)」技術を用い、物理的な距離を超えた臨場感あふれる遠隔会議やイベントのデモを行いました。カメラメーカーとしての圧倒的な光学性能をベースに、エンターテインメントから産業・医療まで、現実とデジタルの境界をなくす映像インフラの未来を提示していました。


【CES 2026:2日目総評】

暮らしに溶け込むAIと、日本発「0から1」の技術が示す未来

2日目の視察は、スタートアップの聖地「エウレカ・パーク」を含むベネチアン・キャンパスが舞台となりました。ここで目撃したのは、技術が単なるスペック競争を脱し、「いかに人間の生活に寄り添い、具体的な不便を解消するか」という実装フェーズへの完全な移行です。

■ 2日目の主要な学びとトレンド

  1. AIの「身体化」と「日常化」の加速
    • MOVAの飛行する掃除機やSwitchBotの家事ロボットに見られるように、AIは画面の中の知能から、物理的な段差を越え、家事を代行する「動く身体」を手に入れました。
    • 旭化成の転倒検知やStA2BLEの歩行解析など、ミリ波レーダーやセンサーが「カメラを使わずに」人を守る技術は、プライバシーと安全を両立する「エイジテック」の標準となるでしょう。
  2. 「日本発」技術の国際的な再評価
    • 信越化学のレンズ技術やSHOSABI(元三菱ケミカル)の素材応用、AMATELUSの自由視点映像など、日本の素材・精密技術が世界のロボットやエンタメの基盤を支えていることを再認識しました。
    • 大阪商工会議所やGTIE(東京工業大学ほか)のパビリオンでは、大学発のディープテックが世界市場を正面から見据えて発信しており、日本企業のオープンイノベーションの機運が最高潮に達しています。

■ 今後注目すべきビジネスの視点

  • サブスクリプションによる「持続的ケア」への転換
    • ダイヤ工業のアシストスーツやTimeliのセキュリティに見られるように、製品を売って終わりではなく、サービスとして暮らしを支え続けるビジネスモデルが定着しつつあります。
  • 「見えない技術」によるUXの向上
    • 複雑な操作を音声(Cosito)やAIハブ(OVAL/IRVINEi)が肩代わりし、ユーザーは技術を意識せず「結果」だけを享受する。この「インビジブル・テック」の視点が、今後の製品開発の鍵となります。

■ 視察を終えて:なぜCESに行くべきなのか

ネットやニュースで得る情報は「点」でしかありませんが、CESの現場、特にエウレカ・パークには、まだ言語化されていない「未来の空気感」と「熱量」が溢れています。

  • スタートアップを知る最短距離: 世界中の数千ものスタートアップが競い合うこの場所こそ、次なる投資先や提携先を見出す最良のフィールドです。
  • 来年への期待と提案: 2026年のトレンドであった「Physical AI(身体性を持つAI)」は、来年にはより安価に、より身近な形で普及しているはずです。

この変化の激しい時代において、自社の立ち位置を再定義し、グローバルな潮流に乗り遅れないためには、来年のCESへの視察・参加を強く提案いたします。 百聞は一見に如かず。この熱狂の中で得られるインスピレーションこそが、次の事業成長の源泉になると確信しています。